LXスペシャルインタビュー

世界中のどんな道でも
楽に、上質に 取材・公開日 / 2022.01

横尾 貴己
Lexus International
チーフエンジニア

次世代レクサス第2弾、ライフシーンを広げるフラッグシップSUV

LX600“EXECUTIVE”。ボディカラーのマンガンラスター〈1K2〉はメーカーオプション

灼熱の砂漠、極寒の山岳、行く手を阻む河川など、世界には道なき道が存在する。そんな大自然にひるむことなく、真っ向から走破する本格オフローダーとしての資質とラグジュアリー性を融合したLXが14年ぶりにフルモデルチェンジ、次世代レクサス第2弾として登場した。新型の開発にかけた想いをチーフエンジニアの横尾貴己氏に聞いた。

「1996年に北米で販売が始まった初代LXからずっと守り続けているのは信頼性、耐久性、悪路走破性です。その3点セットをコアに新型LXは、カーボンニュートラル社会の実現と、多様化する価値観やライフスタイルに寄り添うというブランドミッションのもとで開発を進めました。開発コンセプトは『世界中のどんな道でも楽に、上質に』。“どんな道でも”というのは、過酷な大自然から日常の市街地、高速道路、買い物先の駐車場まで、ありとあらゆる環境を想定しています。どこへでも行けるLXだからこそ、多様なシーンで誰もが気負うことなく、楽に運転でき、上質な移動時間をすべての乗員が過ごせるよう、車両の素性を抜本的に見直しました。クルマづくりの原点回帰といってもいいでしょう」

LX600“EXECUTIVE”。ボディカラーのマンガンラスター〈1K2〉はメーカーオプション。

LXの屈強な走りを支えるのは、ラダーフレームと呼ばれるはしご状の骨格だ。モノコック構造が主流のなか、LXがフレーム構造を踏襲する一因は、その特性を求める地域があるからだという。
「街から遠く離れた過酷な環境下で走れなくなれば、それだけで命にかかわります。岩場や倒木などの障害物を乗り越えたとき、もし下回りをヒットしたとしても、そこがフレームなら壊れることはまずないし、多少歪んだとしてもなんとか走り続けることができます。新型LXは、そんな伝統的構造にこだわりながらも、レクサスならではの『走りの味』の実現を念頭に置き、走る・曲がる・止まるの基本素性を高めるために、プラットフォームを一新してサスペンションのレイアウトを最適化したり、その上に載せるボディパネルに軽量なアルミを使ったり、さまざまな工夫を重ねました」

パワートレーンは3.5L V6ツインターボエンジンに10速ATを組み合わせたもの。最高出力415馬力、最大トルク650N・mを発生する。先代のLX570と比べて38馬力増、116N・m増としながらも、車両全体の大幅な軽量化やパワートレーンの効率向上などの効果もあり、車両使用時の年間CO2排出量はグローバルで約20%低減できる見込みだという。動力性能と環境性能を高次元で両立した、これら技術革新は、レクサスが目指すカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みに寄与する。

伝統のフレーム構造を継承しながら磨き上げた、レクサスならではの上質な走り

刷新した基本素性をベースにLX初の電動パワーステアリング(EPS)などを盛り込み、走り込みを行うことでレクサスらしい上質な走りを実現していく。その過程で横尾氏が重視したのは「リアルの道」と「想い」だ。
「オフロード性能に磨きをかけるために過酷な路面で“壊しては直す”を繰り返し、オンロード性能においても何度も繰り返し走り込むことで、数値に表れない走りの気持ち良さ、レクサス独自の走りの味を追求しました。そのなかで一番難しかったのがステアリングを切った時の車両の反応、いわゆる操舵応答性と乗り心地の両立です。操舵応答性を重視すると乗り心地が悪くなり、ぶるぶるとしたフレーム車特有の振動も消えない。あれこれ試行錯誤を重ねるなかで、フレームとボデーを結合するキャブマウントという部品を締結する際に用いるワッシャー(薄い金属板状の部品)が大きく影響することが分かりました。ワッシャーの大きさを0.5mm、厚みを0.1mm単位で変えていくと乗り心地が変化するんですね。こんな大きなクルマの乗り心地が、小さな部品のたった0.1mmの差で変わるのです」

LX600“OFFROAD”。ボディカラーはソニックチタニウム〈1K2〉。
※写真の一部は合成です。

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